2013年06月15日

青年期と廻り道現象

さいきん精神科の勉強をしていたこともあり、ある図書館の在庫整理(?)の際にもらってきた本を読んでみたところ面白かったのでご紹介




私の生まれる10年以上も前の本なので、統合失調症が"分裂病"として扱われてさえいるのですが、内容は青年期の"悩み"に焦点をあてた、つぶさな観察記録と考察であり、今に通じるところが多分にあるように感じました

まずこの本には「ノイローゼ」という言葉がたくさん出てきます。著者はその定義を「(1)理由のない「不安」に支配され、多少なりとも社会適応に難渋する、軽症の精神障害であって、(2)病因としては心理的次元の要因が主役を演じると考えられ、(3)したがって治療的にも精神療法が中心になるはずの病態である」としています(参考:ノイローゼ - Wikipedia神経症 - Wikipedia)。つまり、たしかに精神障害ではあるのだが、決して脳に病変があるわけではない疾患、といったところでしょうか。そしてもう一つ、タイトルでもある「青年期」を前半と後半に分け、前半を13,14歳〜16,17歳、後半を17,18歳〜22,23歳、そしてさらにそこにプレ成人期(22,23歳〜30歳前後)を追加して定義しています

本書には、青年期前半に見られる種々の恐怖症(「身体」との出会いと同性同年輩者関係の達成)、青年期後半に見られる"スチューデント・アパシー"やうつ病・分裂病(「わが世界の模索」と「廻り道現象」)、そして最後に、「青年期の延長」が社会的問題点でありながら各病が解決される時期でもあるということが述べられています

特に私自身が青年期後半(も終わるころですが)に属していることもあり、"スチューデント・アパシー"について軽く引用してみます

"スチューデント・アパシー"とは

  1. 好発期は青年期後半

  2. 原則として男性のノイローゼ

  3. 努力型真面目人間の無気力、という逆説

  4. 強迫的完全主義的性格の持ち主

  5. 優越者を近親中に持つ

  6. 正業を選択的に忌避する

  7. オリズムあるいは優勝劣敗への過敏さ(※オリズム=勝てないときは降りる主義という麻雀的用語)

  8. 「自分とは何か」

  9. 成人への接近の恐れ

  10. ある種の「やさしさ志向」をもつ

  11. その予後はさまざまである


などで特徴づけられる現代的ノイローゼ(選択的退却反応)のことである

私がこの本をいいなと思ったのは、この"廻り道"を決して良しとはせず(否定もせず)、「廻り道現象はすべての青年にあるのか」と問い、「青年はしかるべきときにしかるべく悩むのが健康なのか、あるいはできうべくんば何らの悩みをもたないほうがよいと考えるのか、さらには悩みを人生の意義あるステップアップとするための条件は何か、そうできない条件は何か等々。いずれも今後の課題であろう」と結んでいる点です。もちろん冒頭・あとがきで書いてあるとおり、この本は教科書ではないのだからこのような書き方で当然といえば当然なのかもしれませんが、とにかくこういう結び方に安心したのです

また、スチューデント・アパシーを含む退却的逃避型ノイローゼに対する治療の一案として(そもそも精神療法しかないとしたうえで)、叔父−甥関係、すなわち"斜めの関係"を挙げています(もちろん治療者=叔父(的立場)です)。父親でも友人でも歳の近い先輩でも弱者同士でもなく、です。その理由は、ある程度無責任な立場だからこそ青年の言葉に耳を貸し考える自由度が増すからだと言います。個人的に自分が叔父に相談するか?と言われたらイエスとは言えないので何とも言えないのですが(やはりここらへんは30年の時代差があるのでしょうか)、少なくとも、説教好きだったり、比較対象であったり、威圧やプレッシャーとなる存在であってはうまくいかないというのは理解できました。果たして現代において叔父的ポジションに当たるものは何なのでしょうか…

とにもかくにも、本書にも書かれているとおり、身体の成長とパラレルに精神も成熟するわけではないということにはもう少し自覚的であってもいいのかもしれません

あと飛ばしてしまいましたが、第四章(アクティング・アウト)で家庭内暴力や自殺を扱っていたり、第六章の"「やさしさ」の病理学"もなかなか興味深いです

まだ著者の笠原先生はご存命のようで、最近の書籍も出ているみたいなのでいつか読んでみようと思います

Amazon.co.jp: 笠原 嘉: 本
posted by medronome at 11:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 医学書・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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